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ヘルメットの「ステッカーチューン」を楽しむコツと配置の美学

ヘルメットの「ステッカーチューン」

バイク用品店に行くと、メーカー純正の派手なグラフィックモデルが所狭しと並んでおり、その完成されたデザインの美しさには目を奪われるものがあります。しかし、あえて装飾のない単色、いわゆるソリッドカラーのヘルメットを選び、自分の手でステッカーを貼って世界に一つだけのオリジナルヘルメットに仕上げるという楽しみ方をご存知でしょうか。これを私たちは親しみを込めてステッカーチューンと呼んでいます。

お気に入りのブランドロゴや、ツーリングで訪れた場所の記念ステッカー、あるいは所属しているチームのエンブレムなど、何をどこに貼るかにはオーナーのセンスと人生そのものが反映されます。真っ白なキャンバスに絵を描くようなワクワク感がある一方で、貼り方を間違えると少し子供っぽくなってしまったり、バランスが悪くなってしまったりと、意外と奥が深い世界でもあります。今回はコレクターとして数多くのヘルメットをカスタムしてきた経験から、失敗しないステッカーチューンのコツと、玄人っぽく見せる配置の美学についてお話ししていきたいと思います。

貼る前の準備と選び方が仕上がりを左右する

ステッカーチューンを成功させるために最も重要な工程は、実はステッカーを貼る瞬間のテクニックではなく、その前段階にある準備と素材選びにあります。多くの人がやりがちな失敗として、買ってきたステッカーをそのままペタリと貼ってしまうことが挙げられますが、これは絶対に避けなければなりません。ヘルメットの表面には、製造時のワックスや日常の使用で付着した手脂、排気ガスの油分などが目に見えない膜となって張り付いています。この油分が残ったままステッカーを貼ると、接着力が著しく低下してしまい、すぐに端から剥がれてきてしまいます。まずはパーツクリーナーやシリコンオフといった脱脂剤をウエスに染み込ませ、貼りたい部分を丁寧に拭き取ることが不可欠です。この脱脂作業をしっかりと行うだけで、ステッカーの持ちは劇的に向上し、何年経っても剥がれない強固なカスタムが完成します。ただし、マット塗装のヘルメットの場合は、強く擦ると艶が出てしまうことがあるため、力加減には十分注意してください。

また、どのようなステッカーを選ぶかという点も非常に重要です。世の中には様々なステッカーが溢れていますが、バイクのヘルメットに使用するならば、必ず耐候性と耐水性を備えた屋外用のものを選ぶ必要があります。紙素材で作られた安価なステッカーは、雨に濡れるとすぐにボロボロになりますし、紫外線を浴びるとあっという間に色あせてしまいます。車やバイクのボディに貼ることを想定した塩化ビニール製のステッカーや、カッティングシートと呼ばれる文字部分だけが残るタイプのものがおすすめです。特にカッティングシートは背景の余白がないため、ヘルメットの地色を活かした自然な仕上がりになり、まるで最初から塗装されていたかのようなクオリティを出すことができます。旅先で売られているご当地ステッカーなどは紙製のものも多いですが、そういったものを貼りたい場合は、上から透明な保護フィルムを貼るなどの工夫をすると長持ちさせることができます。

脱・素人感!カッコよく見せる配置のテクニック

準備が整ったらいよいよ貼り付け作業ですが、ここでセンスが問われます。初心者が陥りやすい罠として、ヘルメットの側面のど真ん中に大きなステッカーを貼ってしまったり、左右対称きっちりに貼ろうとしてしまったりすることが挙げられます。もちろんそれが悪いわけではありませんが、動きのない静的な配置はどこか野暮ったい印象を与えてしまいがちです。プロのレーサーのヘルメットや、カスタムショップが手掛けた車両のデザインをよく観察してみるとわかりますが、カッコいいデザインの基本は左右非対称、つまりアシンメトリーにあります。あえて左右で違うステッカーを貼ったり、片側だけにロゴを集中させたりすることで、見る角度によって違う表情を見せる奥行きのあるデザインになります。

また、ヘルメットが持つラインを意識することも大切です。ヘルメットは球体ですが、よく見ると空気を取り入れるベンチレーションの形状や、縁ゴムのライン、プレスの凹凸など、デザイン上の流れが存在します。その流れに逆らわずに、ラインと平行になるようにステッカーを配置すると、全体としてまとまりのある美しい仕上がりになります。逆に、きつい曲面に大きな四角いステッカーを貼ろうとすると、どうしてもシワが寄ってしまいます。曲面には文字だけのカッティングシートや、伸縮性のある素材のものを選び、ドライヤーで温めながら少しずつ伸ばして貼るのがコツです。

さらに、上級者のテクニックとしておすすめしたいのが重ね貼りです。一つのステッカーを単体で貼るのではなく、ベースとなる大きなロゴステッカーの上に、あえて少し重なるように別の小さなステッカーを配置するのです。こうすることでデザインに立体感が生まれ、使い込まれたツールのようなこなれた雰囲気を演出することができます。ストリート系のファッションや、アメリカンなカルチャーが好きな方には特におすすめの手法です。最初は勇気がいるかもしれませんが、ステッカーは塗装とは違って、気に入らなければ剥がしてやり直すことができるのが最大のメリットです。ドライヤーで温めれば糊も残らず綺麗に剥がせますので、失敗を恐れずに思い切った配置に挑戦してみてください。

ステッカーチューンには正解はありません。自分の好きなものを好きな場所に貼る、その自由さが最大の魅力です。シンプルなヘルメットを買って、旅の思い出や好きなブランドのステッカーを少しずつ増やしていく。そうやって時間をかけて育て上げたヘルメットは、世界中のどんな高級ヘルメットよりも愛着の湧く、あなただけの最高の相棒になるはずです。ぜひ今度の週末は、ステッカーを片手に愛用のヘルメットと向き合ってみてはいかがでしょうか。