バイクのヘルメットを集めることが趣味の私ですが、ヘルメット本体と同じくらいこだわっているのがシールドです。皆さんはヘルメットを購入したときについてくる透明なクリアシールドをそのまま使い続けているでしょうか。もちろんクリアシールドは視界が良好で安全面では最強の選択肢なのですが、シールドを一枚交換するだけでヘルメットの雰囲気は劇的に変わりますし、何よりライダーとしての気分も大きく変わるものです。
今回はコレクターとしての視点から、シールドの色による見え方の違いや、それぞれのメリットとデメリット、そしてシーンに合わせた選び方についてじっくりとお話ししていきたいと思います。たかがプラスチックの一枚板と思うなかれ、シールド選びは快適なバイクライフを左右する重要な要素なのです。
クリア・スモーク・ミラーそれぞれの特徴と見え方の違い
まず代表的なシールドの種類について、それぞれの特徴を深掘りしていきましょう。大きく分けてクリア、スモーク、ミラーの三種類がありますが、それぞれに明確な個性があります。
基本となるクリアシールドは、その名の通り無色透明です。このシールドの最大の強みは、何と言っても圧倒的な視認性の良さでしょう。日中の日差しが強い時間帯はもちろんのこと、街灯の少ない夜道や、照明が暗いトンネルの中であっても、裸眼とほぼ変わらない明るい視界を確保してくれます。安全性を第一に考えるのであれば、クリアシールドに勝るものはありません。雨の日や曇りの日でも視界が暗くならないため、天候に左右されずに走ることができるのも大きなメリットです。しかし一方で、外からライダーの顔が丸見えになってしまうという点は、好みが分かれるところかもしれません。信号待ちで隣の車の人と目が合って気まずい思いをしたり、必死な形相で走っているのを見られるのが恥ずかしいという方も多いのではないでしょうか。また、夏場の強烈な直射日光に対しては無防備なため、眩しさで目が疲れてしまうこともあります。
次にスモークシールドです。これはサングラスのように黒や茶色に着色されたシールドのことを指します。色の濃さによってライトスモーク、ミディアムスモーク、ダークスモークといった段階があるのが一般的です。スモークシールドのメリットは、やはり眩しさを軽減してくれる点にあります。真夏のツーリングなどで長時間走り続ける場合、目に入ってくる情報の量は凄まじいものがあり、紫外線や強い光は疲労の直接的な原因になります。スモークシールドを通すことで景色が少し落ち着いたトーンになり、目の疲れを大幅に抑えることができるのです。また、ヘルメット全体の見た目が引き締まるというファッション的な要素も無視できません。黒いシールドはどんなカラーリングのヘルメットにも似合いますし、顔が見えにくくなることでミステリアスでカッコいい雰囲気を演出できます。ただし、濃いスモークシールドを選ぶと夜間走行は非常に危険になります。街灯のない夜道ではほとんど何も見えなくなってしまうため、夜走る可能性がある場合は注意が必要です。
そして最後にミラーシールドです。これはベースとなるシールドの表面に特殊な金属コーティングを施し、鏡のように光を反射させるタイプです。シルバー、ゴールド、ブルー、レッドなど、カラーバリエーションが非常に豊富で、ヘルメットのグラフィックに合わせてコーディネートを楽しむことができます。ミラーシールドの最大の魅力は、外からは顔が全く見えないのに、中からの視界は意外とクリアであるという点でしょう。外の光を反射するため、スモークシールドと同様に防眩効果も高いです。写真を撮ったときに周りの風景がシールドに映り込むのも美しく、SNS映えを狙うライダーにも人気があります。しかし、デリケートな製品であるがゆえのデメリットもあります。表面のコーティングは非常に薄いため、飛び石や虫の衝突で傷がつきやすく、メンテナンスの際に強く擦るとコーティングが剥がれてしまうことがあります。また、価格も他のシールドに比べて高価な傾向にあります。
シチュエーションで使い分けるコレクター流の選び方
これだけ種類があるとどれを選べばいいのか迷ってしまうものですが、私は走るシチュエーションによってシールドを使い分けることを強くおすすめします。一つのシールドですべての状況をカバーしようとするのではなく、その日のツーリングプランに合わせて着せ替えを楽しむのです。
例えば、朝早くに出発して夕方前には帰宅するような日帰りツーリングであれば、私は迷わずスモークシールドかミラーシールドを選びます。日中の太陽が高い時間帯に走ることがメインになるため、眩しさを防ぐことが快適さに直結するからです。特にミラーシールドは、休憩中にヘルメットをバイクの上に置いたときの佇まいが非常に絵になります。愛車とヘルメットを眺めながら缶コーヒーを飲む時間は、ライダーにとって至福のひとときですが、その景色をより美しく彩ってくれるのがミラーシールドの存在感なのです。顔が見えないことでプライバシーも守られますし、自分の世界に没頭できる感覚も気に入っています。
一方で、泊まりがけのロングツーリングや、帰宅時間が夜遅くになりそうな場合は、クリアシールドもしくは極めて色の薄いライトスモークを選ぶようにしています。経験がある方も多いと思いますが、真っ暗な峠道で濃いスモークシールドをつけて走るのは恐怖でしかありません。見えないからといってシールドを開けて走ると、今度は虫や風が直接目に飛び込んできてしまい、涙で視界が滲んでさらに危険な状態になります。安全に家に帰るまでがツーリングですから、夜間走行の可能性がある日は、見た目のカッコよさよりも確実な視界確保を優先させるべきです。どうしても昼間の眩しさが気になる場合は、クリアシールドにサングラスを併用するという手もあります。これなら暗くなったらサングラスを外すだけで対応できますので、非常に合理的です。
また、最近のヘルメットにはインナーバイザーと呼ばれる機能がついているものも増えてきました。これはヘルメットの内部に出し入れ可能なスモークバイザーが内蔵されており、レバー操作ひとつで瞬時にスモークとクリアを切り替えられるという画期的なシステムです。これがあればシールド選びで悩む必要はなくなりますが、クラシックなデザインのヘルメットやビンテージヘルメットにはそういった機能はありません。私がコレクションしているような古いスタイルのヘルメットを楽しむ場合は、やはりシールドそのものの交換や選び方が重要になってきます。
シールドの色にはそれぞれ一長一短がありますが、自分なりの正解を見つけるのもバイクの楽しみの一つです。私は気分によってシールドを変えることで、同じヘルメットでも全く違う新しいギアを手に入れたような新鮮な気持ちで走ることができています。皆さんもぜひ、食わず嫌いせずにいろいろな色のシールドを試してみてください。視界の色が変わるだけで、いつもの見慣れた景色が違って見えるかもしれませんし、バイクに乗るワクワク感がさらに増すはずです。たかがシールド、されどシールド。奥深い世界がそこには広がっています。
